クリプキクローネ日記帳

ある種の音楽と数学とランニングはミニマルなところが似ていると思う。

Steve Reich - Music for 18 Musicians

CDさらっと紹介シリーズNo.5
Steve Reich - Music for 18 Musicians

スティーヴ・ライヒの「18人の音楽家のための音楽」です。
演奏はグランド・バレー州立大学ニュー・ミュージック・アンサンブルだそうです。

さて、ミニマル・ミュージックの王道中の王道ともいえる曲を持ってきてしまいました。
でもやっぱりこの曲には圧倒的な魅力があります。
数ヶ月に1回くらいどうしても聴きたくて仕方がなくなる日があります。
実際に人が演奏しているからこその迫力があるんだと思います。

ところでいつも思うんですが、この曲は数学的帰納法と似ている気がします。
数学的帰納法を音楽にしたらこうなるんじゃないかというくらいしっくりきます。

とは言っても
「ここの小節の構造が規則的で美しい」とか、
「この転調は合理的で計算し尽くされている」とか、
そういう具体的な指摘をしたいわけではありません。
音符の数とか音程とかについていかにも数学っぽく数値計算で議論したいわけでもありません。

もっと漠然としたイメージの話なので非常に書きづらいんですが、
ある決まった有限のステップが繰り返されて無限の彼方に発散していくプロセスというか
流れのようなものが完全に数学的帰納法だなぁと思うのです。
我々人間が一度にまとめて認識できる対象は高々有限ですが、
それを積み重ねることで無限の世界になるべくしてなる、
あの必然性、力強さ、スケール感のようなものをこの曲を聴くたびに感じます。

学生時代に、そもそも成り立つのかどうかすら怪しい定理を必死に証明しようとしていて
何週間も煮たり焼いたり散々いたぶった末、ある日突然
自分の目の前でその定理が無限に続く階段を鮮やかに駆け上がっていく衝撃的な瞬間があって、
その時のイメージに一番近いのがこのライヒの18人ではないかと思うのです。
ちなみにその証明は次の日ミスが見つかりました。
残念な学生でした。


さて、いよいよちょっとヤバい系の人のブログになってきました。
「CDさらっと紹介シリーズ」というコンセプトの真逆をいっています。
一体どういうつもりでそんなタイトルがついているのかもはや全く分かりません。


しかし我々はもう1つ問題を解決しなければなりません。
散々無限だ無限だと言っておいて、この曲が無限に続かないという問題です。
この曲の演奏時間はおよそ1時間です。
もちろん僕にとってこの曲は無限に続くべき曲なので、
CDが終わるといつも一瞬びっくりします。
ですが、音楽というのは実際に終わってみないと終わりを認識できない芸術なので、
この曲が無限に続かないのは実はそんなに大きな問題ではないのです。
聴いている最中に無限に続くように感じられればよいのです。

一方、そうでないケースもあります。
現代アートの世界にはミニマルアートという小さな単位を繰り返す作品がたくさんあります。
ライヒのCDのジャケットに写真が使われていることも多く、
そこからも分かるようにミニマルアートとミニマルミュージックは多分近い概念です。
ですがミニマルアートは視覚的な発想なのでそれが有限個しかないことが最初からわかってしまい、
個人的にはなんというかおもしろいんだけどイマイチ、ということがよくあります。
たぶん視野の外まで続くくらいに繰り返していれば違うんじゃないかなと思います。
分からないけれど。


それから、無限というと宇宙空間のイメージを持つ人も多いと思います。
例えば夜空には無数の星があって、宇宙はなんて広いんだろうと誰しも思うわけですが、
星空はこのように無数の星を一挙に提示してくるのでやっぱり少し違うものだと思います。
数学的帰納法の限られた有限のステップが無限の領域に昇華していく様子は
宇宙でもミニマルアートでもなく、まさにミニマルミュージックなのです。

ただ結果として、電子音楽ではなく人間が演奏するこの曲が
一番数学的帰納法をイメージさせるというのは興味深いと思います。
数学が客観的に成り立っているようでいて実際は意外に人間中心的な学問なのと
関係あるかもしれません。


以上です。
ちょっと文章が長すぎました。
でもずっと前から漠然と思っていたことは少し文字になってきました。
そして文字にしてみるとただの中二病だったことが分かりました。
無限とかアートとか言っちゃう俺かっこいい的な。
俺のこの芸術的な無限1アップテクニックを見てくれ、的な。
あまりにもがっかりです。
もうそろそろ中3になりたいです。



Music for 18 Musicians (Hybr) (Reis)Music for 18 Musicians (Hybr) (Reis)
(2007/10/16)
Steve Reich

商品詳細を見る


ちなみにライヒの18人は本当にいろいろな演奏が出ていて、
僕は3種類くらいしか聴いていないですが、その中ではこの演奏が好きです。
人が演奏しているという熱気とシステマティックな正確性が見事に両立されています。
  1. 2014/01/11(土) 02:26:36|
  2. アルバム紹介
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<Lunasa - The Merry Sisters Of Fate | ホーム | 辞書に聞いてみよう第18回「に」「ぬ」>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://myumbrella.blog42.fc2.com/tb.php/287-bba47b44
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)