クリプキクローネ日記帳

ある種の音楽と数学とランニングはミニマルなところが似ていると思う。

信号処理とシステム制御 [有本卓(著)] (岩波書店)

なんと1982年の本です。
かなり黄ばんでいます。

この本で一番びっくりしたのは冒頭でした。
まず振幅、周期、周波数といった基本用語の説明から始まったかと思うと、
いきなり内積空間、距離空間、ヒルベルト空間、バナッハ空間を1つ1つ定義し始めて、
そのまま直交基底の話になって、
そして早くも14ページ目にフーリエ変換が導入されるという怒涛の展開です。
フーリエ級数はそのあとです。

最近の本でおなじみの、サインコサインの話からフーリエ級数を導入して
離散と連続のギャップをぼんやりぼかしてフーリエ変換に至る、という流れとは一線を画しています。
フーリエ変換というのは周波数成分に分解することですよ、などという説明は一切ありません。
フーリエ変換のために必要な最小の前提条件で話が進むのですごくおもしろかったけど、
事前に他の本を読んでいないと自分の力ではまず理解できないと思いました。


その後はラプラス変換、z変換を経由して最終的にサンプリング定理にたどり着いて1章が終わります。

そして2章ではホワイトノイズを定義するためにいきなり確率のオンパレードになり、
相関関数やパワー・スペクトルもすべて期待値や共分散なんかを使って定義されるので、
よくあるイメージ図を頭の中で対応づけていかないと既についていけません。
2章の終盤は既に消化不良ぎみ。

3章は現実世界のモデル化なので読みやすいですが、
4章以降は基本的に消化不良のまま終わってしまいました。
残念です。
もう少しこの辺のことに詳しくなってからもう一度読んでみたいです。

古い教科書には、正確性を若干犠牲にした気持ちの説明のようなものがほとんどないので強敵でした。
最近の教科書がいかに分かりやすく書かれていたかを痛感しました。
ですが、こういう無骨な教科書に立ち向かってうんうん唸った結果自分なりのイメージを掴むことができれば、
なんでも気持ちの説明をしてくれる本を読むよりずっと自分のものになるんだろうと思いました。

ところで、後書きで「ロボットの今後」みたいな話題が出てくるんですが、
そのページの隅に人間とコンピュータが向かいあって将棋をさしている挿絵があって、
1982年の本の挿絵がここ数年で現実になっているという凄みを感じました。
  1. 2016/10/10(月) 23:08:00|
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