アイスランドクローネ日記帳

音楽のこと、旅行のこと、ふと思ったこと、全く思っていないこと等を書きます。

すばらしい新世界 [オルダス・ハクスリー(著), 黒原敏行(訳)] (光文社)

今アメリカではトランプ大統領就任の影響で、ディストピア系の古典SFがベストセラーになっているそうです。

小説『1984年』米国で売り上げ1位 トランプに「反ユートピア」見る米国民

アメリカ人ってすごい。
1984年も華氏451度も好きなので、同時に挙げられている「すばらしい新世界」を読んでみました。
ネタバレを多分に含みます。


「すばらしい新世界」というタイトルに皮肉を感じる人が多いようですが、
個人的にはドヴォルザークに引っ張られて全く別の印象になってしまって困りました。

中身は期待どおりすごくおもしろかったです。
最初に出てくるセンターがいきなり迫力があって1ページ目から一期に没入できました。
もっとこのセンターを舞台にいろいろ起きてもよかったのにと思いました。
システムの崩壊とか一斉に突然変異とか混沌とした状況になったらおもしろいですが、
それやると映画チックになってしまうし、むしろ何事も起こらずに日々淡々としている方が
この手の小説の不気味さがよく表れていていいんだと思います。

主人公はバーナードだと思ったら途中からジョンになって面食らいました。
もともとSF好きなので、登場人物の心理描写とか感情移入とかなくても充分楽しめるんですが、
なぜかこの小説はバーナードについて消化不良な感じがすごく残りました。
ヘルムホルツとレーニナも。

ジョンは普通の村で生まれ育っているので新しい文明社会に違和感を抱くのは当然であって、
ジョンがぎゃあぎゃあ喚いても驚きがないんですよね。
あと初登場の時のイメージと終盤のシェイクスピア引用しまくりのイメージにギャップがあって、
若干おいていかれそうになりました。

というわけで文明社会側のアウトサイダーなメンバーで物語を引っ張ってほしかった気がします。
ただ、バーナードもヘルムホルツもジョンに比べると文明社会側の人間であることが強調されていて、
条件付けや環境の影響の根深さ、文明社会の不気味さがよく表れていたので、
そういう意味ではそこがよかったのかもしれません。

レーニナは他の誰も関心を示さないバーナードや野蛮人居住区に関心を示すあたり、
心の奥底にアウトサイダーの気質があるのかなと思って読んでいたんですが、
最後まで普通の文明社会代表な感じで残念でした。
しかもその割にはジョンにすごく執着するあたりが文明社会代表とも言えないし、
微妙なポジションだった気がします。

結局こうやって登場人物にいろいろ期待して読んでしまったので
いつもより登場人物への消化不良が残ったんだと思います。
クラーク先生のSFとかだと最初から全く期待してないからなー。
そもそもクラーク先生の登場人物はそういうのを期待させるようなセリフを吐かないし。

あと、文明社会人が即物的な快楽を求めるところはいかにも現代的で、
1930年代の小説とは思えないです。
惜しむらくは、PCや自動機械やAIの発達で雇用の危機がよく話題になる現代では
人間を大量生産して単純労働をさせるという発想にはならないようです。

なんか気づいたら不満ばかり書いてしまっていますが、
例のセンターと後半に出てくる病院の描写はゾクゾクするおもしろさがあるし、
終盤のモンドとのやりとりは全部言い切ってくれて、いわゆる「読者に任せる」系の突き放しもないし、
最初から最後まで全く退屈しない小説でした。

読書感想文って昔から苦手だったけどやっぱりひどいなこれ。
  1. 2017/02/26(日) 00:35:41|
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