クリプキクローネ日記帳

ある種の音楽と数学とランニングはミニマルなところが似ていると思う。

メモリ技術が一番わかる(しくみ図解シリーズ) [石川憲二(著)] (技術評論社)

なんとかROMとかRAMとかたくさんあってよくごっちゃになるので整理しようと思い読みました。


現在主流のメモリの種類と簡単な仕組みが書いてある本かと思いきや、
予想に反して石器時代まで遡る記録デバイスの歴史に関する本でした。

まず1ページ目で洞窟壁画の話が出てきます。
洞窟壁画も確かに「物理的な媒体に記録を残す」という意味ではメモリです。
なるほどそうきたか、と思いましたが、まだこの時点ではこの本の真髄を見誤ってました。

というのも、イントロだけ大昔の話をしてスケール感を演出する手法がよくあるからです。
本に限らず、論文やプレゼンとかでも多いですよね。
通信技術の話をするために糸電話から始める、とか、
CPUの話をするためにソロバンから始める、とか、よくあるじゃないですか。

そういう意味で洞窟壁画もただのイントロだと思ってたんですが、
この本の場合は洞窟壁画から紙→活版印刷→フィルム→オルゴール→パンチカードと続いて、
一向にコンピュータが出てこないのです。やられました。
「メモリ」の概念が広がりました。おもしろかったです。

コンピュータが出てきたあとも歴史書の体裁は全く崩れず、
重さ1トンを越える世界最初のハードディスクも写真付きで載っていて楽しいです。
手作業で編み込んだ磁気コアメモリにもびっくりしました。

ハードディスクとCDが出てきたあたりからやっと舞台が現代になってきます。
CDってピットとそれ以外の部分を1/0に割り当てるレベル検出だと思ってたんですがエッジ検出もあるんですね。
その方が情報の密度が高いとはいえ、ノイズに引っ張られそうなのにすごいです。

CD-Rが780nmレーザーで膜を焼き切っているのに対し、
CD-RWは銀などの金属の冷却時間によって結晶と非結晶(アマルファス)を変化させて反射率を変化させる方式だそうです。
そりゃあうまく読み書き出来ないときがあるわけだ。

Blu-rayとHD-DVDでカバー層の厚さが違うということも今更知りました。
こういうときは互換性がある方が勝つものかと思ってましたが、そうでもないんですね。

そして終盤にとうとう半導体メモリです。
PROM→EPROM→EEPROMの流れもぐしゃぐしゃになっていたのですっきりしました。
名前的にシリーズっぽくなっていますが、ヒューズの焼き切りで記録するPROMに対して、
EPROMとEEPROMはどちらもフローティングゲートの電荷で記録するので、PROMだけ全く別な感じですね。
後者の2つは、書き込みに必要な高電圧をEPROMは外からかける必要があるのに対して
EEPROMは内部で起こせるというところが違うようです。
EPROMの発明は壊れたICの故障解析から始まったというのはドラマチックですね。
壊れたICに孤立したゲートが見つかって行き場のない電荷がたまっていたのを
不揮発メモリとして利用してしまうという発想がかっこいいです。

それにしても、Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory っていう名前は
どうにかならないのかと思います。
読み込み専用でプログラマブルで消去可能ってなんだよ、っていう。
そういう意味ではフラッシュメモリっていう名前はキャッチーですごくいいですね。

フラッシュメモリに書き込むときの高電圧って、ダイオードに逆電圧かけたときに電流が無理矢理流れる現象と
似たようなイメージだったんですが、量子力学的なトンネル効果によるものだそうです。
どうなってるのかなと思って調べてみたら、ツェナーダイオードの降伏電圧もやはりトンネル効果だそうです。
さらにはAPDの光量検出もツェナーダイオードと同じアバランシェ降伏だそうです。
要するにトンネル効果がよく分かりません。
不確定性原理で位置を特定できないからある確率で壁を越えちゃったとかそういう気持ちですか?
言ってることがいい加減すぎる。

最終章は不揮発性のRAMについてです。
素晴らしいRAMたちですが、彼らのせいでROMとRAMの区別が訳分かんなくなってる感もあります。
個人的に唯一馴染みのあるFRAM(=FeRAM)は、チタン酸ジルコン酸鉛の鉛の結晶格子の中のZr/Tiイオンの状態で
電荷が変わってくるので、それを記録単位としているそうです。難しい。
外から電圧をかけなくても電気双極子が整列しているという便利なものだそうです。
FRAMが破壊読み出しなのは知りませんでした。
再書き込みが必要な割に読み書きどちらも80usというのは速いですね。
再書き込みはパラレルでうまくやってくれてるんでしょうか。

MRAMは名前の雰囲気のとおり磁気系で、手編みの磁気コアメモリと同じ原理だそうです。
読み書きがどちらもSRAM並(30us)と高速だそうですが、どうしても磁石を近づけたくなります。

PRAMはPROMと紛らわしいですが、Phase changeのPなので、
結晶状態を変化させるCD-RWと同じだそうです。そういうことか。
熱を使って書き込みを制御するので他のICの近くにあるとちょっと嫌ですね。

ReRAMは抵抗を変化させて、抵抗値を記憶単位とするようです。
読み出しが1nsだなんて夢メモリですね。
酸化還元反応懐かしいです。苦手です。
二酸化チタン、酸化ニッケル、酸化第一銅などを使うそうです。
メモリまわりはほんとに化学ですね。

ホログラフィックメモリはあまりよく分かりませんが、
3次元に記憶するっていうコンセプトだけは分かりました。
次元が増えるのはパラダイムシフトですね。

分子メモリ、量子メモリについても名前しか分からず。
量子メモリと量子コンピュータの関係が気になります。

というわけで洞窟壁画から量子メモリまでものすごい守備範囲のメモリ本でした。
時間軸もさることながら、横軸、すなわち同時期にたくさん世に出て主流に成りきれなかったメモリたちのことも
たくさん触れられていてお腹いっぱいになりました。
あと、歴史の中で当時の期待感や衝撃の雰囲気も感じ取れる臨場感ある文章もよかったです。
  1. 2017/03/20(月) 01:19:49|
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